【地域医療スポッター_Vol.00】 地域医療構想の策定方法を整理してみた

地域医療構想策定ガイドライン(平成29年3月31日付け医政発0331第57号厚生労働省医政局長通知別添)[1.8MB]
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000080850.html
※本ガイドラインは2025年に向けた地域医療構想策定ガイドラインですが、地域医療構想の概念をわかりやすく整理できると考え、2026年2月現在ですが使用させていただきます。
本記事では、厚生労働省が策定した「地域医療構想策定ガイドライン」のうち、「第1章:地域医療構想の策定(I 地域医療構想の策定)」 の内容について解説します。
地域医療構想は、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向け、効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するための重要な枠組みです。本記事は、ガイドラインの原文を読む時間が限られている方々に向けて、構想策定のロジック、特に「医療需要の推計方法」や「必要病床数の算出根拠」といった核心部分を整理し、解説することを目的としています。
地域医療構想とは
厚生労働省は、地域医療構想について以下のように定義しています。
地域医療構想は、中長期的な人口構造や地域の医療ニーズの質・量の変化を見据え、医療機関の機能分化・連携を進め、良質かつ適切な医療を効率的に提供できる体制の確保を目的とするものです。
地域医療構想の達成を目指すための医療機関の機能分化・連携については、地域での協議を踏まえながら、医療機関が自主的に取り組むことが重要であり、都道府県は、各構想区域に、関係者との連携を図りつつ、将来の必要病床数を達成するための方策その他の地域医療構想の達成を推進するために必要な協議を行う「地域医療構想調整会議」を設置し、医療機関相互の協議により、地域の実情を踏まえて機能分化・連携を進めていく仕組みを設けることとしています。
都道府県は、病床機能報告等の情報を活用して、個別の医療機関の医療機能や診療実績を提示し、地域において不足する医療機能や、各医療機関の役割を明確化した上で議論を進めていくとともに、地域医療介護総合確保基金や重点支援区域制度・再編検討区域制度を活用して、医療機関の機能分化・連携を推進する必要があります。
なお、地域医療構想の推進の取組は、病床の削減や統廃合ありきではなく、各都道府県が、地域の実情を踏まえ、主体的に取組を進めるものです。
(出典:地域医療構想|厚生労働省)
この定義から読み取れる重要な点は、地域医療構想が単なる「病床削減計画」ではなく、地域の実情に合わせた機能分化と連携の促進を目的としている点です。
1. 地域医療構想の策定プロセス:全体像
地域医療構想の策定は、単に将来の病床数を計算するだけの手続きではありません。地域の関係者が将来の医療提供体制について共通認識を持ち、課題を共有し、解決に向けた施策を検討するための一連のプロセスです。
ガイドラインでは、策定プロセスを以下の手順で整理しています。
体制の整備: 都道府県医療審議会や地域医療構想調整会議(協議の場)の設置。
データの収集・分析: NDB(レセプトデータ)やDPCデータ等の活用。
構想区域の設定: 二次医療圏を基本としつつ柔軟に設定。
医療需要の推計: 4機能ごとの将来需要を推計。
医療供給の検討: 将来のあるべき医療提供体制の検討。
必要病床数の推計: 需給バランスと稼働率を踏まえた算出。
構想区域の確認: 設定の妥当性を再確認。
施策の検討: 実現に向けた具体的な取り組みの策定。
特に重要なのは、策定段階から医師会等の医療関係者、保険者、住民などの意見を聴くプロセスが組み込まれている点です。また、策定後もPDCAサイクルを回し続けることが前提となっています。
地域医療構想の策定プロセスについて整理すると、以下となる。
(中略)
1 地域医療構想の策定を行う体制の整備
2 地域医療構想の策定及び実現に必要なデータの収集・分析・共有
3 構想区域の設定
4 構想区域ごとに医療需要の推計
5 医療需要に対する医療供給(医療提供体制)の検討
6 医療需要に対する医療供給を踏まえ必要病床数の推計
7 構想区域の確認
8 平成37(2025)年のあるべき医療提供体制を実現するための施策を検討
(Page 7)
2. 構想区域の設定
地域医療構想を策定する単位となる「構想区域」は、原則として現行の「二次医療圏」と一致させることが基本です。しかし、将来の人口規模の変化や患者の受療動向、アクセスの利便性などを考慮し、柔軟に設定することも可能とされています。
機能区分ごとの完結性
構想区域の設定において考慮すべき重要な点は、病床機能ごとの「地域完結性」の違いです。
高度急性期: 診療密度が極めて高いため、必ずしも構想区域内での完結を求めず、広域的な対応も想定します。
急性期・回復期・慢性期: 原則として構想区域内で完結することが望ましいとされています。特に回復期や慢性期は、地域包括ケアシステムとの連携が重要となるため、身近な地域での提供が求められます。
構想区域の設定に当たっては、現行の二次医療圏を原則としつつ、あらかじめ、人口規模、患者の受療動向、疾病構造の変化、基幹病院までのアクセス時間の変化など将来における要素を勘案して検討する必要がある。
(Page 10)
高度急性期は診療密度が特に高い医療を提供することが必要となるため、必ずしも当該構想区域で完結することを求めるものではない。(中略)一方、急性期、回復期及び慢性期の機能区分については、できるだけ構想区域内で対応することが望ましい。
(Page 12)
3. 医療需要の推計方法:機能区分と「医療資源投入量」
地域医療構想の核となるのが、2025年における医療需要(推計入院患者数)の算出です。これは、現在の病床数や病棟名ではなく、患者に対して実際に提供された医療の内容に基づいて、以下の4つの機能区分ごとに推計されます。
高度急性期機能
急性期機能
回復期機能
慢性期機能
推計のロジック:「医療資源投入量」による区分
高度急性期、急性期、回復期の3機能については、「医療資源投入量」を用いて推計を行います。
ここでの医療資源投入量とは、「入院基本料等を除いた、1日当たりの出来高点数」を指します。看護配置等で決まる入院基本料を含めてしまうと、同じ医療行為を行っていても病院によって点数が変わり、患者の状態を純粋に反映できないためです。
ガイドラインでは、NDB(レセプトデータ)やDPCデータを分析し、以下の境界点(カットオフ値)を設定して機能を区分しています。
境界点の設定
C1(高度急性期と急性期の境界):3,000点
救命救急病棟やICU等で実施されるような、診療密度が特に高い医療が必要な段階。
C2(急性期と回復期の境界):600点
入院初期の集中的な資源投入が落ち着き、状態が安定した段階。データ分析において、資源投入量が一定程度落ち着くラインとして設定されました。
C3(回復期と在宅等の境界):225点
在宅等でも実施可能な医療やリハビリテーションに相当する資源投入量。
ただし、実際の回復期機能の推計には、ここからさらに「在宅復帰に向けた調整幅」として175点を見込みます。
つまり、「3,000点以上」が高度急性期、「600点以上3,000点未満」が急性期、「225点以上600点未満(一部175点まで考慮)」および回復期リハビリテーション病棟入院料算定患者等が回復期として推計されます。
具体的には、患者に対して行われた医療の内容に着目することで、患者の状態や診療の実態を勘案した推計になると考えられることから、患者に対して行われた診療行為を診療報酬の出来高点数で換算した値(以下「医療資源投入量」という。)で分析していくこととする。その際、看護体制等を反映する入院基本料を含めた場合、同じような診療行為を行った場合でも医療資源投入量に差が出ることから、推計における医療資源投入量に入院基本料相当分は含まないこととする。
(Page 14-15)
救命救急病棟やICU、HCU等に入院するような患者像も参考にして、高度急性期機能で対応する患者数とし、高度急性期機能と急性期機能とを区分する境界点(C1)を 3,000 点として推計を行うこととする。
(Page 15)
入院から医療資源投入量が落ち着く段階までの患者数を高度急性期機能及び急性期機能で対応する患者数とし、急性期機能と回復期機能とを区分する境界点(C2)を 600 点として推計を行うこととする。
(Page 15)