千葉県 › 安房(二次医療圏)
CrossHealth / 薬局持久度レポート
高齢化率が県内最高の圏で、在宅の届出は県内最低
安房医療圏4市町の薬局を、供給・高齢化・経営体力・徒歩アクセスで見える化。市区町村ごとの詳細レポートは順次公開します。
この記事の数字について:出所は公開データ(厚生局・薬局機能情報提供制度=GMIS・NDBオープンデータ・社会保障人口問題研究所の将来推計人口など)。分析期間は上の「対象・期間」のとおりで、将来値は推計であり幅があります。検算のやり方と不確実性の扱いは方法論のページ →で説明しています。
無料レポート
安房医療圏の市区町村レポート(A4・6ページ)
ここから先の数字を、出典と作成時点をつけてA4・6ページにまとめたものをお送りします。そのまま社内やご相談の資料にお使いいただけます。受け取る地域をお選びください。
無料・パスワード不要です。ご登録のメールに確認リンクをお送りし、そこからレポートをお読みいただけます。あわせて、隔週の便り(街の数字をひとつ、薬剤師の目で翻訳したもの)もお届けします。登録済みの方はログイン(対象地域は順次拡大しています)
安房医療圏(館山市・鴨川市・南房総市・鋸南町)は、高齢化率44.7%——千葉県の9医療圏でいちばん高齢化が進んだ圏域です。そして在宅対応の届出率は28.1%と県内でいちばん薄い。歩けない人がいちばん多いはずの圏域で、家まで来てくれる薬局の届出がいちばん少ない——この食い違いが、安房の数字です。
薬局は68店、県内9圏域で最少です。65歳以上人口はすでにピーク(2025年)を過ぎ、2050年までに-23.7%——県内で最も大きく減ります。処方せん需要も同じだけ細り、-23.7%は県内最大の縮小です。4市町はそれぞれ違う顔を持ちます。館山市(薬局33店)は圏の中心で、1軒あたり8,707枚と圏内で最も軽い。鴨川市のかかりつけ届出率は37.5%と、薬局8軒以上の圏内3市の中で最も低くなっています。鋸南町(薬局3店)は65歳以上が-33.9%——圏内で最も速く縮む町です。在宅対応の届出がある薬局は圏全体で18店。鋸南町では届出のある薬局がゼロです。徒歩10分以内に薬局がある人は38.5%——実際の道路で測ると、住民の62%は歩いて薬局に行けません。半島の地形で道が海沿いと谷筋に限られ、直線距離の印象より実際の徒歩距離が長くなる地域です。閉局は2025年に2軒(2.9%)。数は少なくても、薬局68店の圏域では1軒の重みが違います。
地図 ── 地域差を見る薬局1軒あたり処方せんの、市町ごとの将来
色は薬局1軒あたり処方せんの2025→2045変化(=経営体力・圏内相対)。いちばん赤いのが鋸南町(-19.7%)、いちばん緑なのが館山市(+8.2%)です。圏全体の需要が-23.7%縮むため、緑の市でも絶対量では減ります。
徒歩アクセス ── 歩いて行けるか圏内3市町では、住民の半分以上が薬局まで徒歩10分より遠い
250mメッシュごとに、最寄りの薬局まで実際の道路を歩いて何分かかるかを計算しました(OSRM実道路網)。安房医療圏で徒歩10分以内に住む人は38.5%で、県平均の79.0%に対して県平均を下回ります。68,025人が徒歩10分圏の外に住んでいます。市町別では南房総市の24.6%から館山市の51.3%まで開きます。
人口動態 ── 需要の源高齢者そのものが、県内でいちばん速く減っていく
総人口は110,673→75,407人(-31.9%)、65歳以上は49,463→37,761人(-23.7%)。高齢化率は44.7%→50.1%——2050年には住民の半分が65歳以上になります。ピークはすでに2025年、つまりいま。処方せんの受け手が減る局面はもう始まっています。
医療計画 ── 県の記述県の医療計画は、この圏域をどう書いているか
県が公表した保健医療計画の本文を、原文のまま引用しています(要約・言い換えはしていません)。
推計条件・患者住所地ベース、パターンB(安房医療圏のみパターンC)平成25年度時点の訪問診療に係る地域別・性別・年齢階級別受療率がその後も変化しないと仮定した場合の推計患者数(参考値)。
千葉県保健医療計画 地域医療構想 PDF 8ページ(推計条件:患者住所地ベース、パターンB(安房医療圏のみパターンC))なお、同ツールでは慢性期*の医療需要については疾患別の推計ができないため、「参考:全疾病」以外の推計値には慢性期*分の入院患者数を含んでいない。
千葉県保健医療計画 地域医療構想 PDF 5ページ推計条件・患者住所地ベース、パターンB(安房医療圏のみパターンC)訪問診療患者数は全体の内数であり、平成25年度時点の訪問診療に係る地域別・性別・年齢階級別受療率がその後も変化しないと仮定した場合の推計患者数(参考値)。
千葉県保健医療計画 在宅医療の推進 PDF 2ページ並べているのは「県の計画にこう書いてある」という事実と、実データの数字です。計画の是非は論じません。
地域の差 ── 市町差
くわしい数字4市町データ一覧
| 市区町村 | 薬局 | 高齢率 2025 | 1軒あたり処方せん 2025 → 2050 | 変化 |
|---|---|---|---|---|
| 館山市 | 33 | 43.2% | 8,707 → 9,418 | +8.2% |
| 南房総市 | 16 | 49.6% | 15,718 → 14,445 | -8.1% |
| 鴨川市 | 16 | 40.3% | 11,742 → 12,155 | +3.5% |
| 鋸南町 | 3 | 50.8% | 16,458 → 13,219 | -19.7% |
※処方せんは安房医療圏のNDB実績(2023年・年間776,048枚)を高齢人口で按分した推計です。個店のランキングは作りません。
この地図の使い方(3段階のドリルダウン)
- 千葉県(ひとつ上・Lv1)=9つの二次医療圏で「どの地域が細るか」をざっくり。
- 安房医療圏(このページ・Lv2)=4市町で「同じ圏域の中の差」を見る。
- 市区町村(詳細・Lv3)=境界・薬局分布・徒歩アクセス・経営シナリオまで(受注生産)。
医療圏の型 ── 競争で減るのか、需要で減るのかこの圏は郊外型(需要減)です
薬局が閉じていく筋道には、大きく2つあります。ひとつは近くに薬局が多く、競争のなかで数が絞られていく道(都市型)。もうひとつは周りに薬局が少ないまま、患者そのものが減っていく道(郊外型)。安房医療圏にいまある68軒それぞれについて、どちらの効き方が強いかを計算し、閉局の起こりやすさで重みづけて足し上げると、競争側の比率は0.19です(0.5以上なら都市型、それ未満なら郊外型)。この地域は郊外型(需要減)にあたります。需要の側は、この地域の総人口が2025→2045で-26.2%です。社人研の推計では、この地域は減り方が急な側(20年で15%超の減少)に入ります。全国47都道府県・335の二次医療圏・65,634行(うち移転や承継を除いた本当の閉局3,952件)を学習した統計モデルによる分類です。特定の地方だけで学んだモデルを他の県に当てはめたものではありません。共通の係数は47都道府県すべての実データから学習しており、この地域の値は、この地域に実際にある薬局の実測値から計算しています。この分類は「どの筋道で薬局が減りやすい地域か」を示すもので、個々の薬局の見通しではありませんし、出店や撤退の判断もしません。
機能の届出 ── 厚生局の名簿で数える地域支援・医薬品供給対応体制加算の届出は83.1%です
薬局の機能は、これまで薬局機能情報提供制度(GMIS)の自己申告で数えていましたが、ここからは地方厚生局の「施設基準届出受理医療機関名簿」で数え直しています。安房医療圏でこの名簿に載っている保険薬局は65軒で、そのうち届出があるのは──地域支援・医薬品供給対応体制加算 54軒=83.1%、かかりつけ薬剤師(服薬管理指導料の注1)(推定) 39軒=60.0%、在宅薬学総合体制加算 17軒=26.2%、電子的調剤情報連携体制整備加算(推定) 52軒=80.0%です。名簿の版は令和8年7月1日版(東北厚生局=青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島の6県のみ令和8年6月1日版。7月分が未公開のため入手可能な最新を使用)。8つの厚生局・47都道府県をすべて同じ月の版でそろえてあるので、県どうしを並べて比べられます(GMISの自己申告は県によって取り込みの穴があり、これができませんでした)。推定を含む項目があります。「かかりつけ薬剤師(服薬管理指導料の注1)」は令和8年度改定でかかりつけ薬剤師指導料・包括管理料は服薬管理指導料に統合され、単独の届出名称が無くなりました。新様式の名簿にある「服薬管理指導料の注1」を代理指標として数えた推定値です(告示・通知文の逐語確認はしていません)。「電子的調剤情報連携体制整備加算」は令和8年度改定で「医療DX推進体制整備加算」の後継と判断して数えた推定値です(同一制度の後継という対応関係は未確認)。このページがこれまで載せていた届出率は、改定前の版の名簿を店名で突き合わせて数えたものでした。並べると、かかりつけ薬剤師(服薬管理指導料の注1)は今回60.0%/これまで65.6%(差-5.6ポイント)、地域支援・医薬品供給対応体制加算は今回83.1%/これまで40.6%(差+42.5ポイント)、在宅薬学総合体制加算は今回26.2%/これまで28.1%(差-1.9ポイント)です。差の主な理由は3つで、(1)令和8年度改定で後発医薬品調剤体制加算が地域支援・医薬品供給対応体制加算に統合されたこと(地域支援の届出率が跳ね上がる)、(2)かかりつけ薬剤師指導料が服薬管理指導料に統合され、代理指標に切り替えたこと、(3)これまでが店名の突き合わせ、今回が医療機関コードでの集計であること。どちらかが誤りという意味ではありません。これから先は、47都道府県を同じ月の版でそろえた今回の数え方を主に使います。分母は名簿に載っている薬局の数で、このページの他の場所に出てくるGMIS由来の薬局数とは出典が違うため一致しません。また届出は「その体制をとると届け出た」という記録で、実際に提供された量ではありません。
このレポートの範囲と、正直な限界
- 【このレポートで言えること】地域単位(都道府県・二次医療圏・市区町村)の薬局供給と、将来の高齢人口から見た需要の傾き、そして徒歩でのアクセスです。地域の持続可能性を映すためのものです。
- 【言えないこと】個々の薬局の経営状態・存続の見通しは一切わかりませんし、扱いません。個店のランキングや「この店は潰れる」といった予測は作りません。出店・撤退の判断もしません。事実をお見せし、判断は読み手に委ねます。
- 【処方せんの推計方法】安房医療圏の院外処方せん実績(NDB 2023年・年間776,048枚)を、市区町村ごとの65歳以上人口シェアで按分した推計です。市区町村別の実処方せんは公表されていません(NDBの最小単位が二次医療圏のため)。
- 【「経営体力の変化」の意味】圏域全体の処方せん総数を現在の水準に固定したうえで、圏内での高齢人口シェアの移動だけを見た相対値です。圏全体として処方せんが増えるか減るかは別で、この圏域は2025年を100として2050年に76.3——つまり圏全体では-23.7%縮みます。表の「絶対量ベース」列(chg_abs)が、その地域の実数としての増減です。
- 【薬局数は2025年で固定】市区町村別の推計では、薬局の数はいまのまま変わらないと置いています。
- 【閉局の数え方】関東信越厚生局の保険薬局「廃止」情報のうち、届出に新機関コード(=別のコードで事業が続く移転・承継)の記載がないものだけを「閉局」として数えています。2025年の千葉県は、廃止届115件のうち移転・承継が73件、閉局が42件でした。※ 公開済みの大阪府版レポートは、この移転・承継を分けずに廃止届の全件を「閉局」として数えています。県をまたいで件数を比べるときはご注意ください。
- 【件数は2026-07-27時点の名簿(関東信越厚生局・2026.7号まで)の値】廃止情報は名簿への掲載が届出から遅れることがあり、ここに載せた年別の件数は下限です。同じ年の件数が、名簿の更新により今後増えることがあります。
- 【閉局の地域割当て】原則は届出座標の市区町村境界への点内判定ですが、全件の住所照合で座標と届出住所が食い違ったもの(1件)は届出上の所在地を優先し、住所欄が欠けて市区町村を特定できず座標も実在の所在地を示さないもの(1件)は圏・市区町村の集計から外しています(県の合計には含まれます)。
- 【徒歩アクセス】250mメッシュの人口(国勢調査ベースの将来人口メッシュ)ごとに、最寄りの調剤薬局までの徒歩時間をOSRM(OpenStreetMapの実道路網・徒歩プロファイル)で計算した実経路ベースの値です。坂・信号・バスは考慮していません。市区町村の境をまたいだ最寄り薬局も「近い」と数えています(郊外では市境をまたぐ通院がふつうのため)。※ 県版(Lv1)ページの医療圏別の徒歩カバー率には、直線距離による旧方式の値が残っている圏域があります。方式の違いにより本ページの値と一致しないことがあります(順次、実道路網の値に更新されます)。
- 【薬局の範囲】調剤を行う薬局のみを対象とし、調剤をしないドラッグストア専業は含みません。位置は届出座標にもとづき、国土数値情報の市区町村境界への点内判定で地域に割り当てています。
- 【将来人口】国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2023年推計)」。推計であり、実績ではありません。
- 【機能の届出率】かかりつけ薬剤師指導料・地域連携薬局・在宅対応などの届出状況は薬局機能情報提供制度(GMIS)の自己申告にもとづき、申告データのある64店を分母にしています(対象68店のうち)。届出=実際の提供実績ではありません。
- 【小さすぎる分母】鋸南町は薬局が8軒に満たない自治体です(4市区町村中1)。1軒あたりの数値は1店の開廃で大きく振れるため、傾向としてのみお読みください。
無料レポート
安房医療圏の市区町村レポート(A4・6ページ)
薬局の分布と、同じ医療圏の市区町村どうしの落差を1冊にまとめました。出典と作成時点を入れてあるので、そのまま社内やご相談の資料にお使いいただけます。受け取る地域をお選びください。
無料・パスワード不要です。ご登録のメールに確認リンクをお送りし、そこからレポートをお読みいただけます。あわせて、隔週の便り(街の数字をひとつ、薬剤師の目で翻訳したもの)もお届けします。登録済みの方はログイン(対象地域は順次拡大しています)
似ている地域
全国335の二次医療圏から、人口規模・高齢化率・薬局の薄さ・医薬分業率で似ている圏を、同じ県を除いて探しました(この圏は基準に合う候補が少なく、5圏に満たない場合があります)。
- 愛媛県八幡浜・大洲 →700km人口規模1軒あたり人口医薬分業率高齢化率
- 徳島県南部 →511km1軒あたり人口人口規模医薬分業率
病院側
安房の病院に、薬剤師はいるか
ここまでは薬局の話です。同じ圏域の病院側を、公表データから測りました。 退院した患者を受けとめる側と、送り出す側は地続きです。
- 病院
- 15件うち200床以上 4
- 薬剤管理指導料の届出
- 40%全国 65.8%
- 100床あたり常勤薬剤師
- 3.12人全国 4.76人
- 病棟薬剤業務実施加算
- 20%全国 27.8%
入院した患者に薬剤師が関わる基本の体制が薬剤管理指導料です。この圏域は全国より低い。 病棟に薬剤師を置く病棟薬剤業務実施加算まで届けている病院は20%(全国27.8%)です。都道府県と協力して自院の薬剤師を薬剤師不足地域の医療機関へ出向させている病院(薬剤業務向上加算)は1件あります。
届出=地方厚生局「届出受理医療機関名簿(医科)」令和8年8月1日現在(関東信越・東北は同7月1日現在)。 病院=病床20以上の医科医療機関。薬剤師数=厚生労働省「令和7年度 病床機能報告」施設票、 令和7年7月1日時点の常勤の実人数。この2つは基準日が1年ずれています。病床機能報告は一般病床または療養病床を持つ病院が対象で、精神病床だけの病院は載りません (この圏域では15件のうち10件が薬剤師数の分母)。 届出があること=算定していること、ではありません。 外来化学療法の内訳は、その届出が3件未満の圏域では伏せています(1〜2件で「連携0件」と書くと 特定の病院を指すことになるため)。個別の病院名は出していません。
お仕事のご依頼
自治体・薬剤師会・研究者の方へ。この地域のより詳しい分析や、地域医療構想調整会議・研修でそのまま使える資料の作成を承ります(圏域ブリーフ ¥100,000〜)。個店のランキングや出店指南は行いません。
お問い合わせ →